10名未満の会社(事業所)でも健康診断って必要⁈
「10人未満の会社でも健康診断しないといけないですよね⁈うちの会社じゃないんですが、聞かれたので」 というご相談。
健康診断とは・・・
事業主が行う健康診断については、労働安全衛生法という法律に定めてあります。
安衛法の一般健康診断には、
〇雇入れ時の健康診断
〇定期健康診断
〇特殊業務従事者の健康診断
〇海外派遣労働者の健康診断
〇給食従事者の健康診断 があります。
労働安全衛生法第66条(健康診断)では、「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第六十六条の十第一項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。」
※事業者と書いてあるのみで、特に何名以上などは定められていません。
(労基法では、使用者と言いますが、安衛法では事業者といいます)
よくある勘違いが、10人未満やまた50人未満であれば、「健康診断しなくていい」という、思い違いをされているケース。
実際にはそんなことはなく、 就業規則の作成・届出義務(10人以上)、衛生管理者や産業医の選任基準(50人以上)がこんがらがってしまったのではないかと思います。
事 業 者 は 、 事 業 場 の 規 模 に 応 じ て 、 以 下 の 人 数 の 産 業 医 を 選 任 し 、 労 働 者 の健康管理等を行わせなければなりません。
(1)労働者数 50 人以上 3,000 人以下の規模の事業場 ・・・ 1名以上選任
(2)労働者数 3,001 人以上の規模の事業場 ・・・ 2名以上選任
1人でも労働者がいれば健康診断を実施。その他、気を付ける点は⁈
常時使用する労働者が1名でもいれば、健康診断を行う必要があります。
健康診断を実施したら、結果を個人へ通知、結果の記録を会社で保管しておく必要があります。
また健康診断の結果、所見がある労働者については、医師からの意見を聞く必要があります。
労働安全衛生法第66条の4(健康診断の結果についての医師等からの意見聴取)
「事業者は、第六十六条第一項から第四項まで若しくは第五項ただし書又は第六十六条の二の規定による健康診断の結果(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る。)に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、医師又は歯科医師の意見を聴かなければならない。」
※所見のある労働者については、「医師の意見」の記載が必要となります。
50人以上の事業場だと、産業医がいますので、その人に書いてもらいますが、50人未満だと、産業医の選任義務がないので、ここがよく監督署の監督で指摘されます。 産業保健センターで無料で書いてもらえます。
健康診断を受診している時の賃金は⁈
またよくある質問が健康診断受診の際の賃金は⁈
これについては、 昭和47年9月18日基発第602号は,
「健康診断の受診に要した時間についての賃金の支払については,労働者一般に対して行われるいわゆる一般健康診断は,一般的な健康の確保をはかることを目的として事業者にその実施義務を課したものであり,業務遂行との関連において行われるものではないので,その受診のために要した時間については,当然には事業者の負担すべきものではなく,労使協議して定めるべきものであるが,労働者の健康の確保は,事業の円滑な運営の不可欠な条件であることを考えると,その受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいこと。」としています。
労働法の原則は、ノーワーク・ノーペイですから、労務の提供がない時間に対して、基本的には、賃金支払いの法的義務はありません。
ただ、「当然には」支払い義務がないものとなっていますが、
①健康診断の予約は、会社を通じて行うケースが多い、
②受診しないといけないと就業規則で定めているケースが多い、
③平日勤務時間中に診断が行われるケースが多いなどありますので、これら考えると、業務に付随した時間であるので、支払った方が望ましいといえるでしょう。
これら一般健康診断に対し、特定化学物質などの健康診断は、特殊健康診断となり、 昭和47年9月18日基発第602号は,「特定の有害な業務に従事する労働者について行われる健康診断,いわゆる特殊健康診断は,事業の遂行にからんで当然実施されなければならない性格のものであり,それは所定労働時間内に行われるのを原則とすること。また,特殊健康診断の実施に要する時間は労働時間と解されるので当該健康診断が時間外に行われた場合には,当然割増賃金を支払わなければならないものであること。」としており,特殊健康診断に要する時間を労基法上の労働時間と捉えているように読めます。 特殊健康診断については、日常生活での健康への影響とは異なり、業務が健康に及ぼす影響から、業務遂行との関連性が強いため、労働時間となります。 ただし、安衛法第66条5項 後段部分 「労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。」 但し書き以降ですが、事業者の指定した医師等とは、別の医師等で受診した場合は、労働者は事業者の指揮監督下に置かれていないのが通常と考えられ,その受診時間は労基法上の労働時間には該当しないものと考えられます。 労働安全衛生法は、施行規則等まで含めると、条文数が1500を超えます。ほぼ施行規則に飛ばす条文になりますが、法の条文そのものは、シンプルにはなっています。また医学・科学の進歩により、改正の多い法律ですので、注意する必要があります。